来年の夏に向けて!
致死率60%超えも。愛猫を襲う殺人ダニ感染症「SFTS」、飼主が今知るべき衝撃の事実
夏の訪れとともに、多くの飼主さんが愛猫や愛犬のダニ対策に気を配り始めます。しかし、一般的なダニが媒介する病気とは一線を画す、より深刻で致死的な脅威が存在することをご存知でしょうか。それが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」です。
この病気は、特に猫において驚異的な致死率を誇り、一度発症すると命を落とす可能性が非常に高い、まさに「死の病」です。さらに恐ろしいことに、SFTSは猫から人間へも感染する「人獣共通感染症」であり、飼主自身の命にも関わるリスクをはらんでいます。
かつては西日本の一部地域の問題とされていましたが、その感染域は年々東へと拡大しており、もはや他人事ではありません。この記事では、SFTSに関して多くの飼主さんが知らないであろう、しかし絶対に知っておくべき7つの衝撃的な事実を、専門家の知見に基づき解説します。愛する家族の一員である猫と、ご自身の身を守るための第一歩は、この病気の本当の恐ろしさを「知る」ことから始まります。
1. 驚異の致死率。猫にとっては「死の病」
SFTSが猫にとってどれほど危険な病気であるか、その致死率がすべてを物語っています。報告によれば、SFTSに感染した猫の致死率は**46.8%から62.5%**という、極めて高い数値を示しています。
感染が多発している宮崎県での2023年の最新データを見ても、致死率は**57.6%**に達しており、感染した猫の半数以上が助からないという厳しい現実があります。これは、現在知られている猫の感染症の中でも最も危険な部類に入り、SFTSが猫にとって「死に至る病」であることを明確に示しています。
2. 「うちの子は室内飼いだから」は通用しない
「うちの猫は完全に室内飼いだから、ダニに刺される心配はない」と考えている飼主さんは多いかもしれません。しかし、その安心はSFTSに対しては通用しません。
もちろん、主な感染経路は屋外でのダニとの接触ですが、室内のみで生活している猫でも感染例が報告されています。その原因は、複数飼育している場合の**「同居猫」からの感染**です。一匹でも外に出る習慣のある猫がいる場合、その猫がウイルスを持ち帰り、室内にいる他の猫に感染させてしまうリスクがあるのです。ウイルスは感染猫の唾液や尿などの体液に含まれており、食器の共有やグルーミングなどの濃厚接触を通じて、家庭内が汚染される危険性をはらんでいます。
3. 危険なのは老猫だけではない。発症の平均年齢は4〜5歳
重篤な感染症と聞くと、体力の衰えた高齢の動物や、免疫が未熟な子猫を想像しがちです。しかし、SFTSの現実はその常識を覆します。
実際のデータによると、SFTSを発症した猫の平均年齢は約4歳から5歳です。これは、猫が最も活発で元気な「壮年期」にあたります。多くの飼主さんが「うちの子はまだ若いから大丈夫」と思いがちですが、SFTSはまさにその元気盛りの猫たちを最も頻繁に襲う、非常に厄介な病気なのです。
4. 症状は「突然のぐったり」。黄疸と血小板減少がサイン
SFTSの最も特徴的な症状の一つは、その「突然の発症」です。「2〜3日前まで元気にしていたのに、急にぐったりして動くなった」というケースが多く見られます。
飼主さんが気づくことのできる主な初期症状は以下の通りです。
- 40℃以上の高熱
- 突然の元気・食欲の消失
- 嘔吐(約3割の症例で見られる)
そして、獣医師がSFTSを強く疑う決定的な臨床所見が、「黄疸(おうだん)」と血液検査で明らかになる「急激な血小板の減少」です。これらのサインが見られた場合、極めて危険な状態である可能性があります。
5. 人間も危ない。特に50歳以上の飼主は要注意
SFTSは、動物から人間へ感染する「人獣共通感染症」です。特に、感染した猫を看病する飼主は細心の注意が必要です。
人間の場合は高齢であるほど重症化しやすく、重症化する患者の90%以上が60歳以上、そして死亡例のほとんどが50歳以上というデータがあります。50歳以上の飼主さんは、ご自身の身を守るためにも最大限の警戒が求められます。
ウイルスは感染した猫の体液すべてに存在します。
「おしっこ、目やに、鼻水、よだれ、うんちと全部です。だから全部やばいっていう風に思ってもらった方がいいです。」
専門家がこう語るように、唾液や尿、目やになど、あらゆる体液が感染源となり得るため、適切な防護策なしに猫に触れることは極めて危険です。
6. 治療は困難を極める。確立された治療法も特効薬もない
現状、動物のSFTSには確立された治療法や特効薬は存在しません。治療は点滴などの対症療法に限られ、猫自身の免疫力でウイルスに打ち勝つのを待つしかありません。
さらに、SFTSの治療は動物病院の最前線に計り知れない負担を強います。厳格な隔離管理が必要なため、一つの処置に2〜3人のスタッフが動員され、マスクや防護服、手袋といった個人防護具はすべて使い捨てです。この防護具だけでも、スタッフ2人が1日に2回処置を行えば1日で数万円もの費用が発生することがあります。これは、猫一頭の治療がクリニックにとって大きな経営的・人的危機となり、スタッフとリソースに極度の緊張を強いることを意味します。実際に、SFTSで入院した犬のケースでは、1ヶ月の入院費用が約55万円にもなったという報告があります。
7. 感染地域は東へ拡大中。もはや西日本だけの話ではない
SFTSは、かつて九州地方を中心とした西日本特有の病気と見なされていました。しかし、近年その感染確認地域は着実に東へと拡大しています。
現在では中部地方でも発生が確認され、関東地方にも迫りつつあります。これは、これまで「自分の地域は大丈夫」と思っていた飼主さんにとっても、決して他人事ではなくなったことを意味します。日本全国の猫飼主が、この病気に対する警戒を強める必要があります。
Conclusion: 愛猫と自分を守るために、まず「知る」こと
SFTSは、高い致死率、予測不能な発症年齢、そして飼主への感染リスクを持つ、非常に恐ろしい病気です。確立した治療法がなく、その感染地域は拡大を続けています。
しかし、この事実を前にただ恐怖を感じるだけでは、愛する家族を守ることはできません。最も重要なのは、この病気の正しい知識を持ち、適切な予防と早期発見に努めることです。
この静かなる脅威から愛する家族を守るため、私たち飼主は明日から何ができるでしょうか? 最初の、そして最も重要な行動は、かかりつけの獣医師とダニ予防について再確認することです。どの予防薬があなたの地域とライフスタイルに最適か、そして万が一の際の初期対応をどうすべきか、今日にでも話し合ってください。通年での適切なダニ予防こそが、この恐ろしい病に対する最も強力な防御策であり続けます。
