年中無休(水曜:予約診療日)/往診可能

2025年7月4日金曜日



SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?


~マダニと猫・人へのリスク、TNR活動に関わる皆さんへ~


◆ SFTSってどんな病気?


SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:重症熱性血小板減少症候群)は、マダニが媒介するウイルス性感染症です。日本でも報告が増えており、ヒトでは高熱や倦怠感、嘔吐、重症化すると致死率が約3割にも達します。猫や犬などペットにも感染が確認されており、動物からヒトへの感染事例も報告されています。


◆ どんなときに注意が必要?

  • 主な感染経路は、マダニに咬まれること。

  • 最近の研究では、感染した猫から人へ(特に体液や血液に触れた場合)の感染も指摘されています。

  • 特にTNR活動(野良猫の捕獲・不妊手術・元の場所へ返す活動)に従事する方や、体調不良の猫に接する獣医療関係者は、十分な注意が必要です 


◆ TNR活動・現場でのリスク管理

● どんな猫がリスク?

  • SFTSに感染した猫の症状:

    • ぐったりしている

    • 発熱

    • 黄疸

    • 血小板数の低下

  • このような症状が見られる場合、「TNR活動での受け入れには特に注意が必要」とされています 


● 健康チェックの重要性

  • 捕獲・搬送前に「元気かどうか」「食欲はあるか」などをしっかり確認しましょう。

  • 本当にリスクを排除したい場合は、体温測定や、CBC(血球計算)、ヘマトクリット値による血液検査も有効です。

  • 元気な猫で、上記の症状がなければ、SFTSのリスクはかなり低いと考えられます 


● ダニ対策も必須

  • ダニから人にSFTSがうつるため、ダニがついている猫はなるべく除去してください。

  • スポット剤は有効ですが、完全な感染防御にはならないため注意が必要ですが、推奨します


● 防護具の使用・対応の工夫

  • ぐったりした猫・SFTSの疑いがある猫を扱う時は、マスク・ゴーグル・帽子などの個人防護具を必ず着用しましょう。

  • 可能な限り隔離スペースや陰圧室での対応が望ましいです。

  • 体調の悪い猫は、通常のTNR活動ではなく専門病院で診断・隔離を


◆ 法整備と獣医師の役割

  • 現場では「自己責任」とされやすい課題も多く、行政・議会レベルでの法整備の必要性も訴えられています。

  • 獣医師は「公衆衛生を守る資格」であり、地域猫管理やTNR活動における感染症対策も大切な使命です 


◆ 飼い主さん・地域の皆さまへ

  • ペットの定期的なマダニ予防、健康チェック、室内飼いの推奨が重要です。

  • 不安な場合や体調不良時は、早めに動物病院・医療機関にご相談ください。

  • SFTSは「知ること・備えること」で防げる感染症です。みんなでリスクを減らして、動物と人の安心な共生を守りましょう!


まとめ

  • TNR活動や野良猫・外飼い猫の管理、また日常の診療現場でも、「猫の健康状態をしっかり確認し、ダニ対策・防護具着用を徹底すること」が、SFTS予防の最も大切なポイントです。

  • 感染の可能性がある場合は、無理な対応をせず、必ず専門の施設や医療機関と連携しましょう。

2025年6月3日火曜日

 



下痢について知っておきたいこと


下痢とは?


下痢は、「うんちの水分が多くなる」「回数が増える」「量が増える」といった状態を指します。

発症から7~14日以内なら“急性下痢”、2~3週間以上続く場合や、何度も繰り返す場合は“慢性下痢”と呼びます。


主な原因

  • 急性下痢:食べ慣れないものを食べた、または消化管の寄生虫が多いです。

  • 慢性下痢:数週間以上続く下痢は、消化管や全身の病気が関与することがあります。


下痢が起きる主な仕組み(病態生理)


下痢は主に以下の理由で起こります。多くの場合、これらが複数絡み合っています。

  1. 浸透圧異常(水分の吸収バランスが崩れる)

  2. 分泌異常(腸から水分が多く分泌される)

  3. 粘膜の障害(腸のバリアが壊れやすくなる)

  4. 腸の動きの異常(運動異常)














2025年5月15日木曜日



 パグやフレンチブルドッグに多い「涙やけ」や「目やに」…実は涙の通り道が曲がってる!?



最近、パグやフレンチブルドッグ、イングリッシュブルドッグといった "鼻ぺちゃ犬" の人気が高まっています。でも、「目がいつも潤んでいる」「涙やけがひどい」「鼻先がカサカサしている」なんてお悩みを抱えていませんか? 実はそれ、涙の通り道="鼻涙管(びるいかん)" に問題があるかもしれません。

今回は、最新のCT検査で明らかになった短頭種犬の涙の通り道の異常について、わかりやすく解説します。


【涙はどこへ行くの?】 涙は目の表面を潤した後、目頭の小さな穴(涙点)から "涙道" に入り、最後は鼻の中へ排出されます。これが「涙が鼻水になる」仕組みです。


【短頭種の犬ではどうなってるの?】 CTを使ったドイツの研究では、パグやフレンチブルドッグでは涙の通り道が…

・涙の通り道(鼻涙管)が短く、角度が急で ・涙の管が通常と逆方向に折れ曲がり ・管の途中で「横道(副開口)」ができて、涙が別ルートに流れている

という驚きの結果が出ました!


【なぜそれが問題?】 短頭種の多くは、涙が本来の出口(鼻前庭)から出ずに、鼻の奥へ流れてしまいます。これにより:

・涙が目の周りにたまりやすく、涙やけや目やにに ・鼻先が乾燥してガサガサになる(涙が鼻の先まで届かないため) ・通常の涙管検査が役に立たないことも(検査液が鼻から出てこない)という問題が起こります。


【対策はあるの?】 全ての短頭種犬が問題を起こすわけではありませんが、次のことに注意しましょう:

・涙やけや鼻の乾燥が気になる場合は、動物病院で相談を ・目の周りの清潔を保ち、刺激や感染を防ぐ ・涙が流れにくい構造の可能性があることを理解しておく



【まとめ】 パグやフレンチブルドッグの「うるうるした目」には、実は涙の抜け道の奇形が隠れていることがあります。見た目の可愛さの裏には理由があったんですね。日頃のケアと心配でしたらご相談くださいね

2025年5月12日月曜日

 

✅安全な輸血を目指してます!

輸血前に確認すること(クロスマッチ)

輸血をする際には、**犬同士の血液の相性(適合性)**を確認する「クロスマッチ(交差適合試験)」を行います。

🔍 クロスマッチとは?

  • 輸血する側(ドナー犬)と、受け取る側(患者犬)の血液を試験管で混ぜて、拒絶反応(免疫反応)が起きないかを調べます。

  • これにより、副作用や命に関わる事故のリスクを最小限に抑えることができます。

📌 クロスマッチが必要な理由:

  • 犬の血液型には「DEA」という種類があり、中でもDEA 1型が重要です。

  • 犬は初回の輸血では強い拒絶反応が起きにくいとされますが、2回目以降は非常に危険になることもあります。

  • クロスマッチで問題が見つかった場合は、別のドナーを探します。


    ❤️ 安全のためにご協力を

    • 飼い主様のご理解と同意のもとで輸血を行います。

    • 輸血後も24時間以内の体調変化に注意し、異変があればすぐに病院へご連絡ください。

    🐾 よくあるご質問


    Q. 犬にも血液型があるのですか?

    → はい、犬には「DEA(Dog Erythrocyte Antigen)」という血液型があります。DEA 1型が特に重要です。


    Q. 安全性は高いですか?

    → はい。輸血の前にクロスマッチなどの試験を行い、安全を最大限確保しています。







2025年5月6日火曜日

今回のブログは、異物を飲み込んでしまった子達への対応です!! 

対応が早ければ、吐かせることで解決しますが、吐かせにくい異物もいくつかあります。

そんな時は内視鏡で摘出してます。

今回は、おもちゃを食べちゃった子です。



しっかりと取れて安心ですね☺️
猫ちゃんの誤飲もよくあるのでまとめてみました。

参考にしてください!


🐱猫ちゃんの異物誤飲:

猫における異物誤飲はよく見られる救急疾患であり、特に「ひも状異物(LFB:linear foreign bodies)」と「個体異物(DFB:discrete foreign bodies)」が多く見られます。

  • **ひも・糸・毛糸・ミシン糸(針付き含む)**などが多く、口から腸まで絡まって「腸の蛇腹状ひだ形成」を起こすことがあります。

  • その他、おもちゃ・スポンジ・プラスチック・ゴム・布・髪留め・スリッパの一部・骨の破片など多種多様なものが誤飲されます。

  • 消化器疾患で来院する猫のうち、**約10%**が最終的に異物閉塞と診断されたという報告もあります。


🔹年齢と発症傾向

  • 全年齢に起こりますが、若い猫で多発する傾向が顕著です。

  • 平均年齢は約3.3歳で、2歳未満の猫が多くを占めるという報告もあります。

  • **雑種(Domestic Shorthair)**が約7割、**オス猫にやや多い傾向(60~70%)**も指摘されています。

  • 高齢猫の誤飲も報告があり、平均11歳での誤飲(薬のピルケースの先端)が見られた例もあります。

  • リスク因子として、完全室内飼い、ストレス、不安傾向、運動不足が挙げられ、**異食行動(pica)**との関連が疑われています。


🔹治療法:内視鏡 vs 手術

  • 胃や食道までの異物であれば、内視鏡による摘出が第一選択で、**成功率は約88%**と高いです。

  • 例えば、ミシン針の誤飲例(19頭中18頭が内視鏡で摘出成功)では、外科手術を回避できました。

  • 腸まで進んだり、閉塞や炎症がある場合は、手術(開腹・腸切開・胃切開)が必要です。

  • ひも状異物では、腸を複数箇所切開したり、壊死部分の切除が必要なこともあり、より複雑な手術になります。

  • 例:ピルケースの先端を誤飲した15件中、自然排出は1件のみ9件が内視鏡摘出、5件は嘔吐で排出でした。


🔹予後と合併症

  • 適切な治療を受けた猫では予後は非常に良好です。

  • 異物摘出後の生存率は91~100%と非常に高く、術後の腹膜炎や吻合部離開などの重篤な合併症は少ないとされています。

  • 特に犬に比べて、猫は手術後の腸の縫合部の破裂が少ない傾向にあります。

  • 死亡率は10%未満ですが、以下の要因でリスクが高まります:

    • 線状異物(腸を切断するように損傷)

    • 閉塞が長期化した場合

    • 既に敗血性腹膜炎を発症していた場合(この場合は生存率約50%)


✅まとめ

  • 猫の異物誤飲は特に若齢猫で多くひも状異物や小型おもちゃの誤飲が目立ちます。

  • 多くの場合、内視鏡や外科的な摘出が必要ですが、早期対応で予後は極めて良好です。

  • 飼い主は、ひも・ビニール・おもちゃの破片・ピルケースなど、小さな日用品の管理に注意することが重要です。



困ったことがありましたらいつでも相談してください。

2025年5月5日月曜日

だんだん気温が高くなってますね。

ゴールデンウィークも後半です。わんちゃんとのお出かけには注意してください。
少し早いですが、熱中症についてコメントします。


犬の熱中症

犬の熱中症は命にかかわる緊急疾患で、**体温の異常上昇(しばしば41℃以上)**と、中枢神経系の障害を伴い、多臓器不全を引き起こす可能性があります。極端な高温への暴露や過度の運動により、体温調節機構が破綻し、全身性炎症反応(SIRS)が発生し、最終的には播種性血管内凝固(DIC)や多臓器障害へと進展することがあります。


1. 臨床症状と診断

熱中症の犬は、**急な虚脱、高体温、過度のパンティング(速い呼吸)、嘔吐や下痢(時に血便)、ショック症状(頻脈・弱い脈拍)、神経症状(錯乱、けいれん、昏睡)**などを示します。**出血傾向(点状出血や血便)**がみられることもあります。

診断は、高温への曝露や激しい運動の既往、臨床徴候、血液検査・凝固検査によって行います。血液検査では、肝酵素や腎機能の上昇、電解質異常、凝固異常などの臓器障害が確認されることが多いです。

→ ポイント:中核体温が約40.6℃以上で神経症状を伴う場合、熱中症と診断されます。


2. 治療(救急処置と支持療法)

早期の冷却と全身管理が治療の柱です。ぬるま湯での体濡らしや扇風機による気化熱冷却が推奨されます(氷水やアルコールは避けます)。

動物病院では、冷却、点滴による循環維持、酸素投与、気道確保(必要なら挿管)などが行われます。

体温が約39.5℃まで下がったら冷却を停止し、反跳性低体温を防ぎます。DICに対しては血漿製剤や抗凝固薬、けいれんには抗けいれん薬、胃腸障害には胃薬などの対処がされます。

→ NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)は腎障害や胃腸出血を悪化させる恐れがあるため使用しません


3. 予後とリスク要因

重症例の致死率は約**50%**と報告されており、治療開始までの時間が予後に強く影響します。

死亡リスクを高める要因には、以下が含まれます:

  • DICや急性腎不全の発症

  • 来院時の昏睡、低血糖、凝固異常(PT/aPTTの延長)

  • 高齢、肥満、90分以上の来院遅れ、けいれんの発現

逆に、意識があり反応が良好で、軽度の異常のみの場合は、適切な処置で完全に回復するケースもあります。


4. 予防法

熱中症は予防が最も効果的です。以下の対策が推奨されています:

  • 暑い時間帯の散歩・運動を避ける

  • 日陰と飲水の確保

  • 室内では換気やエアコン使用

  • 車内に犬を残さない(短時間でも危険)

  • 暑さに慣らす期間(1〜2週間の段階的な運動)

→ 短頭種(フレンチブルドッグ、パグなど)や肥満犬は特に注意が必要です。運動による熱中症の割合は、車内放置よりも圧倒的に多いという報告があります。


5. 疫学(発症しやすい犬種・気候)

熱中症は世界中どこでも発生しますが、夏場に多く、特に暑く湿度の高い地域での発生が多いです。

ある研究では、症例の74%が運動後に発症し、5%のみが車内放置によるものでした。

また、以下の犬種・特徴に多く見られます:

  • 大型犬(ラブラドール、シェパード)

  • 短頭種(フレンチブルドック、パグ、ブルドック)

  • 肥満犬、高齢犬

  • 心臓病・呼吸器疾患を持つ犬

近年は地球温暖化の影響で熱中症症例の増加が予想されており、予防啓発の重要性が高まっています。


暑い日の運動は控えめにしてくださいね。








2025年5月4日日曜日

🐶【腹腔鏡による犬の避妊手術のご案内】🔍


🔸腹腔鏡手術とは?

お腹に小さな穴をあけ、細いカメラと器具を使って行う、体にやさしい手術方法です。お腹を大きく切らずに済むため、負担が少なく済みます。


🔸メリット

✅ 傷口が小さく、痛みや出血が少ない

✅ 術後の回復が早い(通常の日常生活へ戻るのも早め)

✅ 傷が小さいので見た目もきれい

✅ 手術中にお腹の中をしっかり観察できるため、安全性が高い


🔸通常の開腹手術との違い

  • 開腹手術:3〜5cm以上の切開

  • 腹腔鏡手術:約0.5〜1cmの小さな穴を2〜3ヶ所

    → より少ないストレスで手術を受けられます。


🔸おすすめの理由

避妊手術は、将来的な病気(子宮蓄膿症・乳腺腫瘍など)の予防につながります。

さらに腹腔鏡を使うことで、より安心で快適な避妊手術が可能になります。

痛みの少ない良い手術だと思ってます。参考にしてください!








専門外来 CT・画像診断病理センター